自分らしい旅写真を撮りたいひとへ:撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち(ダイヤモンド・ビッグ社)

toritabi_cover600旅先で写真を撮りはじめたころ(って、けっこう最近ですが……)、仕事でお会いした、フォトグラファーで映像作家としても活躍するアーティストに、こう言われたことがあります。「あなたにとっての“いい写真”ってなに?」

そのころは、“カメラマンに同行してもらう予算がないから、なんとか自分で写真を撮らなければ次の仕事はない”という、切実かつ後ろ向きな理由で写真を撮っていました。わたしにとっては理不尽に思えるほど高価な一眼レフを購入して、とりあえず機材で武装してみたけれど、当然ながら“いい写真”を撮れるわけもありません。

それでも「いい写真、つまり自分の好きな写真を撮るためには、まず自分がどんな写真を撮りたいのか、それを明確にすること」「自分の目で見たリアルな風景が、どう写るのかを体得するために、迷わずシャッターを押すこと」。そんなアドバイスを思い出しながら、雑誌や写真集をひたすら眺めたり旅先でシャッターを切りまくるうちに(デジカメでよかった……)、撮りたい対象や表現したい写真がどういうものなのか、少しずつつかめた気がします。

『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』を手に取って、あのときの「いますぐカメラを持って旅をしたい」という切羽詰まったきもちを思い出しました。この本は、世界中を旅しながら写真を撮り続けている旅人たちの「旅」と「写真」への思いが1冊に凝縮したフォトブックです。何を被写体に選んでどう心を通わせ、その一瞬をどんなフレーミングで切り取るか。紙面を眺めていると、機材のスペックや技術論を超越したところにある、旅写真ならではの瞬間のなまなましさが伝わってきます。

誌面に登場する旅人と旅先は……(以下掲載順、敬称略)。

旅音/インドネシアのボロブドゥール遺跡、バリ島
三井昌志/バイクで旅したミャンマーの農村風景
竹沢うるま/アフリカの奥地、ニジェールとマリの人々
藤木ケンタ/ボリビアのウユニ塩湖、パタゴニアなど
松尾純/西チベット、聖山カイラスの巡礼者たち
中田浩資/中国、東南アジア、サハリンを巡る鉄道旅
角田明子/エストニア、キヒヌ島の人々
鮫島亜希子/インド、ウダイプルの女性たちの祭り
関健作/ブータンの学校で学ぶ子供たち
高橋良行/スリランカの人々の素朴なポートレート
松尾太士/アメリカ、雄大な国立公園の風景
長綱淳平/アメリカを車で気ままに旅した記録
新山貴之/スペイン各地の街並とフラメンコの舞台
寺本雅彦/冬のアイスランドの風景と人々
山本高樹/ヒマラヤの高地スピティを踏破する旅
吉田友和/旅と写真にまつわるインタビュー
森本剛史/旅と写真のおすすめ書籍の紹介

ページをめくって心を奪われた1枚の写真から、次の旅がはじまるかもしれません。

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